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手作りビール挑戦記 -Part 3-


写真7 9kgのモルトをミリングし終わると休む間もなく、次のステップへと進んだ。前ページにある煮沸釜で、モルトを煮るのである。ただし、煮るといっても単純に煮ればいいというわけではない。そこには、ちゃんとした自然の摂理があるのだ。

 まず、破砕されたモルトを釜の中に投げ込む。それから、モルトの量に合わせて、スタッフが釜にお湯を足していく(写真7)。もちろん、ただ単に足すだけではない。釜全体の温度が45℃になるように調節していく。そしてこの温度を10分間キープするようにコントロールする。これはモルトから流れ出たたんぱく質を凝固させるためである。これによって、不純物を取り除きやすくするのである。

 ところで、釜は下から焚くので、下の方が暖かくなる。そのため同じ温度をキープするために、我々は、釜の下のバルブ(ドレイン)を開けてそこから流れ出る熱い麦汁をバケツみたいなのに入れ(写真8)、それを上から釜に戻す(写真9)という作業を繰り返し行なわなければならなくなる。つまり、上下の麦汁を混ぜていくことで、全体の温度をキープしようという作業なのである。

写真8 45℃をキープしたら、次は麦汁の温度を65℃近くまで上げていく。これによってモルトのデンプン質を糖分に変えていくのである。麦芽に含まれる酵素の働きによってデンプンが麦芽糖になることは周知の事実である。しかし、温度を間違えると、デンプンは麦芽糖にはならない。麦芽から得られる糖分は、デキストリン、マルトース、マルトトリオース、フラクトース、グルコースなどの種類があるが、デキストリンは非発酵性糖分であり、その他の糖分がいわゆる麦芽糖と呼ばれるものなのである。

 70℃近くになるとアルファ・アミラーゼが反応し、デキストリンが多くできてしまう。65℃近くの温度が、麦芽糖を作り出す最適の温かさなのである。また、65℃を超えると適切な酵素が死んでしまうという問題もある。だから、ここは65℃を死守するための重要なプロセスなのである。そして、ここでも下から麦汁を組み、上からかけ入れるという作業を繰り返し、この温度を約40分間キープする。

 実は、45℃の時も、65℃の時も、温度が一定になれば、下から麦汁を組んで戻すという作業はせず、ふたを閉めて後はタイマーをセットするだけでよかったらしいのであるが、皆より3kg分多くの麦芽をミリングしていた私は、その説明を受けておらず、ずーーっとその作業を繰り返していたのである。(教えてくれよっ!)

写真9 しかも、おっちゃんは、ずっとそうしてろと言い残し、そのままどこかへ行ってしまったのである。私はてっきり適切な時間が来たらおっちゃんが教えてくれるものと思い込んでおり、この作業をずっと繰り返していた。しかも、65℃を死守と言われていたので、もらったマニュアルに目を通す時間もなく、ずっと作業を続けていたので、一体いつまでやればいいのかわからなかったのである。そして、このヒンズースクワットに相当する作業を約1時間半ほど行なってしまったのである。

 体力の限界に近づき、私はいつまでやるのか別のおっちゃんに問うた。そのおっちゃんは、「えっ?説明受けてなかったの?でも、やればやるほど良いモルトができるから」。

 そうだったのか。。。一応、無駄ではなかったらしいが、私の体力の消耗はハンパではなかった。。。

 65℃をキープする糖化作業が終わると、麦汁の温度を78℃まで高めて、酵素の働きを止める。これをマッシュアウトと言う。

 ちなみに、今回行なった糖化方式は、ステップ・インフュージョン方式と呼ばれるもので、エールタイプのビールに用いられるものである。糖化方式はその他に、67℃からマッシュイン(スタート)して、そのまま一時間キープし、77℃でマッシュアウトするシングルインフュージョン方式、そして釜全体を煮るのではなく、全体の麦汁の4分の1だけを煮てそれを釜に継ぎ足していくことを繰り返して温度を66℃まで高めていくデコクション方式などがある。デコクション方式は、滑らかな口当たりや麦芽風味を大切にするピルスナータイプのビール醸造に良く用いられる。

 ところで、先ほど、デキストリンは非発酵性糖分であると述べたが、実はデキストリンにも重要な役割がある。アルコール分解が終わった後の甘味やボディは、デキストリンによって構成されるのである。つまり、麦芽糖とデキストリンをどうバランスしていくかが、全体のフレーバーを決める重要な要素となるのだ。もちろん、今回の醸造では、そんなことはしない。だって、プロじゃないもん。 つづく  豆知識:アサヒは独自開発した酵素の働きによって、デキストリンもアルコール発酵させることに成功。これによって甘味が少なく、その分アルコール度数が高く、辛口な味わいを実現したのがアサヒスーパードライである。

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