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北海道サッポロビール園で残りビールを翌日に注ぎ足し


 まずは2002年1月25日付けの西日本新聞の記事を読んでいただきたい。

 札幌の観光名所の一つ、サッポロビール園(札幌市)が昨年二月まで、営業終了後に、タンクから注ぎ口につながるホース内に残った生ビールを、翌日に少量ずつ混ぜて客に出していたことが二十四日、分かった。一日置いたビールは「ただの色のついた水と同じ」(同園)と言いながらも、こうした再利用を十年以上も続けていた。

 同園の飯島研二総支配人と和田善治統括支配人によると、ホースに残った通称「たれ」「しぼり」と呼ぶビールを、水で押し出し密閉容器に集めて冷蔵。次の日、五百ミリリットルジョッキに三〇〜五〇ミリリットル入れ、その上で新しいビールを注ぎ足した。

 原料の「たれ」は、同ビール園全体で一日平均二〇リットルに上り、注ぎ足したビールは、「飲み放題」の客に限って出し、単品注文の客には出さなかった。こうした慣行は新しい社員やアルバイトに口頭で指導してきた。

 和田統括支配人は「いつ、だれが始めたか分からないが、私が赴任した一九八九年には慣習のようになっていた。意識が欠けていた」と話した。

 だが、社内で疑問視する指摘があり、本社が昨年二月二十日付の文書で止めるよう指示。同園では、以後は「行っていない」と主張する。


 まず、少し話が脱線するのを許して欲しい。日本のビアホールでは、アルバイトが生ビールを注ぐことが多いため、サーブする量にものすごいバラツキが出るが、これはビアホール先進国のドイツでは許されない。どのグラスも7:3の比率が守られているという。

 もちろん、その比率で注ぐことが、ビールを美味しく飲むための秘けつであるから、という理由が大きいのだが、実はコスト的にもこれは重要な意味をもっている。ドイツでは、生ビールを注ぐ際、ひと注ぎ多く入れるか入れないかによって、年間で100万円以上の違いになってくるというのは、業界の常識となっている。そのため、注ぐ量を徹底的に管理しているのである。

 たぶん、サッポロビール園でもコスト的な意識から、『たれ』や『しぼり』と呼ばれるビールを翌日にも利用していたのだろう。一日平均二〇リットルといえば、一樽と同じだ!500mlジョッキにして40杯分。これはたとえばの話だが、500mlを500円として一日、2万円。1年365日でなんと730万円分になる換算である!これは経営者としては使わない手はないだろう。

 しかし、同社は自分が、生鮮食品業界に位置すると考えていなかったのだろうか。この危機意識のなさは、雪印のそれと同じである。

 雪印は数年は、バルブ掃除の怠慢から大量食中毒者を出してしまった。もちろん直接的な原因は、洗浄不足によって細菌が発生したことなのだが、同時に同社は返品された牛乳を再利用するという許されざる行為も行なっていた。これは同業他社も行なっていた行為で、コスト問題から考えるとやらざるをえないという話であった。

 この企業倫理の問題は、いつの間にか途絶え、話題は細菌を発生させた工場管理の問題へと移行していってしまった。

 幸い、牛乳とは違い、ビールを再利用しても食中毒者を出すような細菌が発生しないから良いようなものの、やっている根本は同じである。だぶん、サッポロビール園だけではなく、他のビアホールでも行なっているところがあったのではないか。一企業のではなく、業界全体の問題だと考えられる。

 また、これは憶測に過ぎないが、こんな再利用をしているビアホールのビアサーバはものすごく汚れていたのではないかと穿ってしまう。ビアサーバも一日洗浄を怠れば、雑菌が繁殖し、ビールをまずくする原因となる。(私はこのようなまずい生ビールをサーブするレストランに何回も出会っている)

 確かに企業が健全に活動していくためのコスト管理も重要だが、それ以前に企業倫理を自主的に徹底させる活動を行なって欲しいと思う。これは今言われている企業ブランド育成にもかかわってくる問題であるはずだ。―――END



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bottan
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