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ベルギービール紀行-2


 まず、『ムーデルランビック』の話をしよう。

 この店では、ビールを約1200種類も置いてある。そのメニューは、まるで電話帳のようだ。アルファベット順に書かれているビールメニューを見ても、どれを頼んで良いのかわからない。日本でいろいろなビールを試して、かなり知っていると思っていた私だったが、この店の前で私は本当に何も知らないのだということを悟った。

 30数枚にわたるメニューをパラパラめくってみても、どうしていいのかわからない。はじめて来たお客は、自分の知っているビールをとりあえず頼むか、お店の人に聞くしかないだろう。

 ベルギービールの話とは、若干ずれてしまうが、この膨大なメニューを見て、日本のこれからのビール事情を思い浮かべた。

 ビールについて一応ながら一通りの勉強をしている私は、どんなタイプのビールを欲していてるかお店の人とコミュニケーションをはかることができる。しかし、これが今まで『ビールください』としか頼んだことがないお客だったらどうだろう。

 もちろん、このムーデルランビックで、そんなお客は生きていくことはできないだろうが、日本の普通のお店で、たとえば10種類の見たことも聞いたこともないエールやその他のビールが置いてある店に入ったらどうなるだろうか。『ビールください』としか頼んだことがないお客や、ドライしか見たことも聞いたこともないお客だったら、この時の私と同じように何を頼んで良いのかわからない、という状況に陥らないだろうか。

 日本はこれから多くの飲み屋もしくは酒屋が、いろいろなタイプのビールを取り扱っていくようになるはずである。そこで、ビールはそろえたが適当にしか説明できませんという店が増えてしまったらどうなるか。ワインブームで、日本の酒屋や居酒屋にワインアドバイザーは増えたが、ビールの専門家はそれほど増えていないようである。こうした状況では、日本で流行になりつつあるベルギービールも、一過性のものになってしまわないか、危惧してしまうところだ。

 ちなみに、ムーデルランビックでは約10種類のビールを飲んだ。うわさに聞いていたようにどのビールを頼んでも、その銘柄が印刷されたグラスが出てきた。ケグから提供されるビールにも、ちゃんと専用のグラスがそろっている。ここまで徹底する必要はないが、日本でもエールビールにはチューリップ型の華やかな香りを促進させるグラスで提供するなど、グラスとの相性を考えサーブしてくれる店が増えればいいなと思った。ただ、トラピストビールに多いのだが、グラスのふちまわりのメッキが塗ってあるのは金属の味を感じてしまい、ちょっといやかなと思った。

 ちなみに、この店は夜になっても、ロンドンであったようなパブの喧噪はなく、みなしずかに飲んでいる落ち着いた雰囲気を感じさせるカフェである。観光の中心地より少し、南にはずれており、住宅地の中にあるせいか、落ち着いている。本当にゆっくりと味わうための店である。

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