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ベルギービールセミナー - レポート


 去る3月19日(日)と5月12日(日)の両日、日本地ビール協会主催のベルギービールセミナーが開催された。ベルギーの歴史と共にベルギービールの多様性をここまで広くかつ深く学ぶことができるセミナーの開催は、日本でもはじめてのことであり、唯一のものではないだろうか。今回は、このセミナーの概要を少しだけ紹介しよう。(以下の情報はすべて「JCBAスペシャル・セミナー〜ベルギービールを本格的に学ぶ〜」のテキストを参照しています)

 ベルギーでは、今日、127の醸造所で約800ブランド・1547商品数のビールが造られている(1997年時点)。その多様性から、ベルギービールには、ブルワー一人ひとりにスタイルがあると言われている。では、こうした多様性はどのようにして築き上げられて来たのだろうか。今回のセミナーでは、それを歴史的背景と切り離しては考えられないものと位置付け、まずその関係性から勉強することとなった。

●ベルギーの歴史とベルギービールの多様性の関係
 現在のベルギーは、1831年に独立してできた比較的新しい国である。それ以前は、戦争のたびにあちこちの国の属領として弄ばれ、多様な民族に次々と侵入され続けて来た。そのため独立を勝ち取った今日でも、ベルギーには、「ベルギー語」とか「ベルギー民族」というものが存在していない。それゆえ、単一的な「ベルギー文化」もない。また、北部と南部で、まったく別々の言葉を用いてるため、価値観や生活習慣も異なっている。さらに、北部同士、南部同士でも地域ごとに独特の訛りがあるため、コミュニケーションは容易ではない。

 このような理由からベルギーの人々は生れ育った町や村に小さく固まり、外部との接触を億劫がるという。ベルギービールの多様性は、こうした孤立的で排他的なローカル性と無縁ではないと考えられる。

 同時に(一方で)、支配者が変わるたびに持ち込まれた他国の習慣や文化に、大きな影響を受けて来たことも否定できないだろう。ここで、ベルギービールの多様性に加えて独自の特異性が生まれたのではないか。ベルギーの排他的なローカル性と一見矛盾する異文化の摂取が、今日のバラエティ豊かなベルギービールを生み出しているのである。

●ベルギービールの歴史

1. ローマ帝国時代(紀元前)
 今のオランダ、ベルギー、フランス北部など、北海からドーヴァー海峡に至る海岸線に面した土地一帯は、ローマ人から「ベルギカ」と呼ばれていた。そこには紀元前から「ゴロワーズ」と呼ばれる多数のケルト人(ガリア人)が居住し、それぞれ部族ごとに分かれて自治権を持って暮らしていた。「ゴロワーズ」はすでに醸造の技術を持ち、部族ごとに独自の味わいのビールを造り飲んでいた。それらのビールは、今日のようにホップで風味付けしたものではなく、大麦や小麦を主原料に、コリアンダー、リコリス、パラダイスグレーンズ、ジュニパー、ボックマートル、ベリーなど、さまざまなスパイスやハーブが使われていた。

2. フランク王国時代
 395年、ローマ皇帝テオドシウスが没し、ローマ帝国はその子供達に分け与えられて東ローマ帝国と西ローマ帝国となった。420年、ローマ帝国の弱体化を見たゲルマン系サリ・フランク族は、ライン河を越えてベルギカに押し寄せて来た。当時、ライン河はローマ帝国とゲルマンを隔てる東の境界線であった。歴史に名高い「ゲルマン民族の大移動」は、こうしてまずベルギカへの侵入から始まったのである。その結果、ローマ軍はケルンからブリッセルを経てドーヴァー海峡のブーローニュ(現フランス)を結ぶ軍用道路まで撤退し、そこで留まった。フランク族はまず、その軍用道路から北を占領し、ケルト人にゲルマン語(後年、転訛してベルギーオランダ語=フラマン語になる)とゲルマン文化(キリスト教)を教えた。ベルギーが北と南で言語が異なるようになるのは、このときからである(その軍用道路は今日でもベルギーの言語境界線となっている)。また、フランク族は、それまで原始的な多神教を信仰していたケルト人をキリスト教に改宗させることに力を入れ、そのための手段としてビールを利用したという。

ブリガンド 今回のベルギービールセミナーでは、こうしたベルギービールの黎明期にはじまり、「フランドル伯爵時代」「ブルゴーニュの支配時代」「ハプスブルグ家の支配時代」「スペインの支配時代」「フランスの支配時代」「オランダとの統合からEC加盟」といったさまざまな時代の歴史的背景を勉強した。そしてセミナー途中で、歴史に関わるベルギービールがいくつか紹介された。たとえば、右の「ブリガンド」の名前は、16世紀後半、フィリップ2世とスペイン軍と戦った山岳ゲリラ隊(義勇軍)に由来している。

 さて、ここまで読んだらもっとベルギービールについて知りたくなったのではないだろうか。次回のセミナー開催時期については未定であるが、決定次第HPで紹介する。また、ベルギービールのことを知ることができる日本語サイトとしては、企業のものであるがベルギービールを輸入している小西酒造や、どなたかは知らないがかなりのヒット数を誇る個人のサイトなどがある。

 セミナーでは、その他、ベルギービールを大きく11種類に分類し、それぞれのスタイルについて深く学んだ。ブリュッセルのビア・カフェの状況を書き記したマイケル・ジャクソンの文章もテキストに含まれているため、ベルギーを訪れた際には大いに役立つことだろう。

 さぁ、皆さん、次回はぜひ参加しましょうね〜!

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