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マリアージュ


 フランス語で結婚という意味だと思う。

 Aという料理を食べて、Bという飲み物を飲む。AとBとが口の中で出会うと、Aを単独で食べるよりも、Bを単独で飲むよりも、美味しくなる。つまり、お互いの存在を高めあうことを「マリアージュ」と言うらしい。

 実は、私はこのような完全なるマリアージュに出会ったことのない、食経験の浅い人間である。料理自体は美味しい、飲み物自体も美味しい、けれど「合わなくはないね」あるいは「悪くはないね」といったケースがほとんどだ。せいぜい「こりゃぁマッチするんじゃないの」とか「なかなか合うじゃない」ぐらいが最高の体験である。漫画「美味しんぼ」の主人公が言うような、「舌の上で黄金のピラミッドが立つ」という体験をしてみたい・・・。

 たとえば、日本人なら誰もが合うと思っている、刺身と日本酒。これに関してさえ、私は刺身とマリアージュできる日本酒に出会ったことがない。生醤油は、ワインは当然のごとく、日本酒ですらなかなかマッチしないと思う。珍味類は悪くはないが、マリアージュレベルには出会ったことがない。きっと何千通りもの珍味と日本酒の組み合わせを試さなければ出会えないのだろう。

 牡蠣とマリアージュできる白ワイン、肉料理とマリアージュできる赤ワインにも出会ったことがない。チーズとワインというのは、珍味と日本酒くらいの相性の良さはあるが、それでも経験不足のため、マリアージュに出会えるに至っていない。同じチーズでも管理の仕方で状態が異なるし、ワインは日本酒とは比較にならないくらいの種類があるから、両者における本物の相性を探すには人生を賭けなければならないのかもしれない。食の神様にもっと愛されていれば、すぐにでも出会えるのかもしれないが。。。

 詳しくはわからないが、マリアージュという化学(?)反応が口の中で生じるには、塩(いろいろなミネラルを含む)の効かせ方と、それによる旨味の引き出し方が、飲み物の持っている塩やミネラル分とどう関係するのか、ということが大きく依存している気がする。単に、肉には赤ワインっていうレベルの話しではないと思う。料理の塩梅と、飲み物の塩梅、そしてそれら両者の塩梅。20世紀初頭に旨味が発見されたように、このあたりを科学的に解明していく研究が進むことを望む。これは、21世紀におけるガストロノミーの最大のテーマになりうるのではないか?

 料理と飲み物のマリアージュを探し出すのは難しいが、もしあるとするならば、かなり真実に近い味だろう。ハマグリの貝合わせというヤツがあるが、それくらいピッタリとくる唯一のものなのだろうと思っている。現実社会の男と女のマリアージュの場合、ただ結婚してしまったというような、「合わなくはないね」というマリアージュが多いのではないか。「黄金のピラミッドが立つ」ようなレベルのマリアージュが世界に何組いるのかも気になるところだ。

―――END


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bottan
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