この日は、平日だったし、大雪の影響もあったせいか、あまりお客さんがいらっしゃらなかったようで、私一人のためにこんな個室を用意してくれました(感激!)。 カニが茹で上がるまでに、前菜として、「火取り細芽とメカブ」「カレイの肝の煮付け」「甘エビの刺身」「ひれ黒カレイの汐汁」を出していただいた。
最初の細芽(ほそめ)を焙ったものから感動した。細芽とは、たぶん海苔の細芽部分だけを摘んで乾燥させたもの(あんま説明になってねーな)だと思う。明るい緑色の針葉樹みたいな葉っぱをたくさん並べて乾燥させていて、その手法自体は海苔なのだが、一枚の海苔というにはスカスカで向こうが透けて見える状態だし、色もぜんぜん違うので最初海苔だとは思わなかった。それを炭火で軽く焙ったものをいただいたのだが、それが普通の海苔よりも海苔らしい。絵に描いたような海苔の香りがするのだ。海苔が海苔らしいとは意味不明かもしれないが、こんな潮の香りのする海苔には出会ったことがない。あまりの香ばしさと旨さに、口に入れた瞬間、眼がカッ!と見開いた。海苔の真髄に出会った気がした。
甘エビ(卵付き)の刺身は、ミカンを食べて皮だけ出すような感じで、殻ごと口の中に入れて、身と卵だけ食べて殻を出すというやり方を教わった。身と殻の間にある旨味も全部一緒に味わうのである。そこが眼目である。その他、カレイ肝も汐汁も最高に美味しかった。
肴を食べ終わる頃、まず雌のセイコカニが茹で上がってきた。ミソと内子を交ぜて食べ、外子はそのままパリポリ食べる。肩の身(足の付け根部分)は、ミソがついたところを口の中にいれて、ガブガブと噛む(噛み切るのではなく、前歯で身を掻き出す感じ)。そして汁と身を一緒に食べる。これを三国では「しがむ」というらしい。足の身は、前歯で殻ごとバリバリと噛んで身と汁を吸いながら食べる。甘エビもそうだが、とにかく殻ごと食べることですべての旨味を食べつくすのがポイントである。いちいち殻を割って食べたりしてたら、美味しい汁がこぼれてしまうのだ。それでは本当の美味しさを味わうことができない。ちなみにこの食べ方だと、前歯が丈夫な人しか食べられない。入れ歯では無理だろう。女将さんにそう問いかけると「その通り。若いうちしか食べられない」との答えが返ってきた。しかし、歯は丈夫でも若いうちは金がない。食べられる人が食べられない。食べられない人が食べられる。う〜ん、この世の矛盾である。
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