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能代のハタハタ酒田から羽越本線で北上する。海岸線を走っているため、車窓から日本海の荒波が見える。羽越本線は、秋田から奥羽本線という名前に変わる。どちらにも付いている「羽」には、一体どんな意味があるんだろうか。 この日は、終点の東能代で五能線に乗り換え、一駅目の能代で降りた。 酒田に降り立った時、やはりここは寒さのレベルが違うなぁと思ったのであるが、能代はさらに寒かった(北上すればするほど寒くなるだけなんだけどね)。街全体が灰色に凍りついてしまった感じなのである。夜だったせいもあるかもしれないが、こんな色がない街を見たことがないし、こんなに静まり返った街も見たことがない。友人と思い立って、突然来てしまったため、宿も予約していない。これで宿が見つからなきゃ死んじまうなぁとちょっと恐怖に思った。しかし、駅から歩くこと約8分。繁華街までやってくると、すぐにビジネスホテルを見つけることができたし、飲み屋も十軒くらい見つけることができた。 飲み屋を物色し、迷いに迷った末、入ることに決めたのは「花ふじ」というお店であった。看板には、鍋、ヤキトリ、天ぷら、寿司、定食と書いてある。一体、何屋やねんっ!とインチキ大阪弁で突っ込みたくなったが、地方都市では、どうやらこういう総合的にやっている料理屋の方が当たりが多い気がしてきた。 というのは、地方ではやはり人口が少ないので天ぷらだけ、寿司だけ、ヤキトリだけ、という専門的なお店は存在してはいても、何軒も成り立つわけではない。逆に、なんでもやってるお店という方が地元民には重宝され、高いレベルを維持しているのではないかと思うのだ。では高級店はどうかというと、ちゃんとしたものを出そうとするから地方性が失われ、東京の料亭に内容が近くなって行くのではないか。また、銘酒居酒屋という形態もあるが、地元の人は全国の有名な酒を飲みたいと思っているから、地元の酒をあまり置いていないという傾向がある。旅行者にしてみれば、それでは地元に来た意味がないと思うのだが、そんなのは都会人の勝手な言い種であろう。観光客目当ての料理屋のレベルというのはたかがしれている。よって、本当の美味しい地元料理を食べたいとなると、地元の料理自慢のおばあちゃんが住んでいるお家を訪問するしかないだろうと思ってしまうのだが、それは何のつてもない旅行者には不可能なこと。可能性があるとすれば、地元民が普段使いで通っているお店になるのではないか。それがみんなに重宝されるような、なんでもやっているお店ということになるのではないか。そんな結論に至ったのである。 花ふじでは大変素晴らしい経験をさせてもらった。まずは突き出しの、ゼラチン質がたっぷりのアオツブ貝の煮付け。醤油漬けの雄のハタハタを焼いたもの。東京モンにはちょっと塩っぱい味付けだったが、身がプリプリしてて感動ものだった。ハタハタの焼き魚というと、東京では雌しか見たことがない。たぶん、卵いっぱいの雌の方が見た目的に有り難がられるからだろうが、身の旨さで言うと雌よりも雄の方が上である。ちなみに、これはシシャモもそうである。雄の方が旨い。 それから塩だけで漬けたというハタハタの白子の塩辛。クリーミーで、ものすごく濃厚な味で、ちと鼻血ブーになってしまう。さらに自家製の紅鮭の飯寿し(いずし)を出してもらった。10日間ほど漬けたということで、熟れ具合がとても良く、すごくうまかった! 残念なのはハタハタの飯寿しが食べられなかったことだ。ハタハタの飯寿しは、25日間くらい漬け込む必要があるとかで、まだ完成していなかったのだ(その後のエピソードへ)。 東京に戻った後に調べたら、紅鮭の飯寿しは、東北の日本海側や北海道の名物料理だと知った。そこで、有楽町の北海道館に行ってみると紅鮭の飯寿しを発見!喜んで買って食べたのだが、これは偽モノであった。へんな甘さがあり、鮭の風味がまったく活きていない。しっかりと麹で熟成させているのではなく、アミノ酸投下などによって熟成期間を早めて味を誤魔化しているのだろう。ガッカリだ。余計な味付けをしてない、本当の飯寿しを食べたい、と、今、切に願っている。
能代港と五能線の話しに行く |
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