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ビールスープを作るビールスープなる言葉をはじめて聞いたのは、辻静雄さんの著書「料理に「究極」なし(文春文庫)」を読んでいた時のことであった。ビールは単に冷して飲むだけのモノではなく、冬には温めてホットビールにしたり、ビールでムール貝を蒸したり、牛肉を煮込んだり、いろんな用途に使われていることは知っていた。それにはるか昔、ドイツではビールのことを「飲むパン」と呼んでいたことも。 しかしながら、ビールをスープにして飲むというのは知らなかった。著書(p.152〜p.153)を少し引用する。 バッハの二度目の妻アンナ・マグダレーナの手記の形式をとる『バッハの思い出』というのもそうした一冊である。<中略>この中で両三度「わたしどもの粗末な食卓」という言葉が出てくる。具体的な描写はないのだけれど、バッハの弟子たちが彼女の後にくっついて台所に入り、「奥さん、音楽はおなかがすきますね」といいながら、「ビールスープを一皿とか、扁桃乳を一杯、一文パンを一つなどとせしめる」場面がある。<中略>三十年戦争で疲弊しきった、労働力が極度に乏しかった時代である。そんな中でビールスープといっても、どれほどのものであったのだろうか。ドイツにはアイントップフなる、フランスのポッ・ト・フーと同じ発想から生まれたと思われる、肉と野菜のごった煮があるが、それが出てくるのではなく、ビールスープといわれても、肉っ気のない、わずかばかりの野菜、ひょっとして、この地の特産とされるビーツが浮き実として入った粗末なものだったろうと推測するにとどまる。 どうやら、ビールスープというのは、常食だったような雰囲気を受ける。一体どのようなものか興味を持ち、インターネットで検索してみた。すると、409件もヒット!それらのページを見ていくと、単にビールを温めてパンを添えるものから、セロリやニンジンなどを刻んでビールで煮るようなスープらしいものまで、レシピはまちまちであった。 一瞬、どれが本当なんだろうと思ったが、逆に多様なレシピがあるということは、それが家庭料理として本当に根付いていた証拠なのではないだろうか。古代から近代にいたるまで、ビールはヨーロッパ人にとって貴重な栄養源であったと聞いている。貧しかった庶民は、腹持ちをよくするためにビールを煮物にして食べてたんじゃないなかぁと勝手に想像。そして、作り方はそれぞれの家庭で違ってたし、その時にある具材で変わったのではないかと。 ちなみに、バッハの生年月日は、 1685年3月21日生まれ(1750年7月28日没)。この時分、私の知る限りでは、黒い上面発酵ビールが主流であったので、当時のビールスープは黒かったんだろうなぁと推測。なんだか、飲みたくない感じがするなぁ。。。 というわけで、先日、意を決してビールスープを作ってみた。黒ビールを煮ただけだとマズイと思ったので、鶏ガラで取ったスープや野菜なども入れてみた。 使用したのは、ラベルがかわいい、陶器ボトルのセイラークリスマス。昔のビールに近いと思われる、味の濃いドイツのクリスマスビールを使ってみたのだ。しかし、温めると泡がものすごい勢いで沸き立って来た。これは、ホップせいだ。シーズナルビールでホップが大量に使用されているのだろう。実際、作ってみるとチキンスープで薄めてみても、ホップの苦味がものすごく強調されてしまい、どうにも飲めるシロモノではなかった。たぶん、昔のビールは現代よりもホップの苦味が薄かったのではないかと想像する。でなければ、常食となるような味ではない・・・。あるいは使ったビールが間違っていたのかも・・・。 ビールスープづくりに失敗し、ウーンと唸り、考え込んでしまってから、約一ヵ月後のことだった。相原恭子という人の「ドイツ地ビール 夢の旅(東京書籍)」を読んでいると、32ページ目に次のようなくだりがあった。 ピルズナー・バイエルン説によれば、ここで彼らが1842年に醸造したものが、世界的に有名になったチェコのピルズナー「Urquell(ウアクヴェル)」であるというわけ。その後、彼らはバイエルンに戻りピルズナーをドイツへ伝えたのだ。 だが、バイエルンの人達がそれまで飲み慣れた黒ビールは、苦みが少なくてマイルドである。ホップの苦味が効いたピルズナーは当初人気が出なかった。 やはり、そうだ。当時、すでにホップは使用されていたとはいえ、ドイツでは(といってもドイツの中のバイエルン地方だけにしか言及していないが)あまりホップの効いたビールは歓迎されていなかった。ビールをスープにして飲むという慣習があるならば、尚のことだったろう。ヤッタ!これで私の推測は、確かな答えになった!と喜んでいたら、同じ日に、もうひとつ新たな発見をした。それは、セイラークリスマスは、ダークラガービールだったということ。ヨーロッパのクリスマスビールは、全部エールだとの勝手な思い込みがあった。どうりで苦かったわけだ・・・ガーン
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