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もうひとつの冬の味覚、海藻類


 冬といえば、魚介類がもっとも旨くなる季節である。カニ、フグ、ブリなど、数え出せばキリがない。しかしながら、そんな中で、地味ながらもキラリと光る味覚がある。それが、安く、旨く、そしてヘルシー(髪にも効く?)な、海藻類。海苔やワカメも、寒い季節に旬を迎えるのだ。


1. 生海苔
焼いてない、乾燥もさせてない、生の海苔。それを醤油で煮たものは滋味溢れる味わいである。一見すると、桃屋の「ごはんですよ」に似ているけれど、味のレベルはまったく違う。シンプルなのに(あるいはシンプルなゆえに)深い。日本人に生まれてきて良かったと思う、米の飯のおかずであると言えるだろう。


2. ワカメ
茹でて塩漬けにしたワカメは一年中食べることができるが、生ワカメはやっぱり冬のものである。生ワカメは、塩漬けよりもふっくらしていて、身が厚い。フワフワ、クニュクニュといった柔らかい感じだが、味は鮮烈である。先日、「ワカメのしゃぶしゃぶ」というものを食べる機会にありつけた。生の、焦げ茶色をしたワカメを、昆布で取った塩だけで味付けしたダシにさっとくぐらせると、「これ、本当に食えるの?」という色をしていたワカメが、一瞬にして鮮やかな緑色に変わる。醤油やポン酢などの調味料は使わず、そのままいただく。シャキッとした味で、素晴らしく旨い。冬しか食べられない、こういう味覚を味わうと、日本人で良かったとしみじみしてしまう。まぁ、しみじみというか、地味滋味って感じだけどね。


3. アオノリ
そう、焼ソバにふりかけるヤツである。ポテトチップスにかかっているアレである。瓶詰の物しか見かけないので、季節感のないアオノリだが、やはり新物が採れるのは冬の季節なんだそうだ。天日で乾燥させた新アオノリをそのままパリポリと食べたら、潮の香りがして、とても美味しかった。まるで旨味の塊である。それと、これも今が旬のカジキマグロのソテーに、新アオノリのソースをかけたものを食べた。う〜ん、海の幸である!旬っていいね。


4. ハバノリ
16年ほど前、漫画「美味しんぼ(10巻)」で初めて目にした言葉「ハバノリ」。その回のストーリーは、こんな感じだった。

岡星の弟・良三が密かに思い続けていた女性、鈴子はある男性に裏切られ、食べ物を一切受け付けなくなってしまった。そこで山岡らは、鈴子が子供の頃から好きだった魚介類を求め、彼女の故郷である伊豆へ行くことに。そして伊豆の海岸を歩いていると、ノリを採っている子供達を発見する。

栗田「何してるの?」
子供「ノリを採ってるだよ」
山岡「ハバノリだよ。冬になると岩場にこうして生えるんだ。ブダイという魚は夏は臭くてまずいが、冬になるとこのハバノリを食べるんで旨くなるんだ」

そう言って、山岡らもノリを作りはじめる。このノリを東京に持ち帰り、鈴子の病室で焼きはじめる。

「磯の香りが」

反応を示す鈴子。そして、ついにハバノリを口にする。

「あの岩場で遊んだわ。みんなでハバノリ採って、夕方に焼いて食べた。美味しかった。体の中に伊豆の潮風が吹き渡る。昔の私に戻りたい。私、生き直したい」


 う〜ん。自殺をしようとまでしていた女性の命を救ってしまう、ハバノリって一体どんなもの?と長い間、ずっと興味を持っていたのだが、昨年の夏、ついに湘南のとある食堂で発見したのだった。喜びいさんで、ハバノリを注文すると、「ハバノリは冬のものだから、今はない」とのそっけない返事。というわけで・・・冬になるまで待ちました(笑)。

 2006年2月某日。ついに長年の夢を果たす時がきた。そのお店を再訪し、しらすハバノリ丼を食す。ハバノリは、香りにだいぶクセがあるようだ。海苔が潮の香りだとすると、ハバノリは磯の香りだ。お店の人いわく、ハバノリは岩ノリの一種なので、なるほどなぁと思った。食感はちょっと硬くて、あまり美味しいとは思えないが、小さい時から食べていたら「他の海苔では物足りない」と思うようになるのかもしれない。お土産用のハバノリも販売しているということだったので、思わず買ってしまったが、手摘みの天日干しのハバノリは、5枚で1,800円もしたのだった。

 家に帰り、ハバノリをじっくりと見てみる。浅草海苔とは違い、ゴワゴワ、ガサガサしている。海苔の葉っぱ一枚一枚も大きくて、それだけ見るとどちらかというとワカメに近い。ノリという名前は付いていても、普通の海苔とはまったくの別物である。火で軽く焙ると黒に近い深緑色だったのが、綺麗な緑色にさっと変わった。お店の人がお勧めしていたように、ハバノリ、納豆、生卵を混ぜて食べてみる。クセのあるハバノリと、淡白な味のしらすの組み合わせでは、ハバノリの個性ばかり目立ってしまっていたが、ハバノリ、納豆、生卵というクセのあるモノ同士が集まると、なかなかどうして、美味しいではないか!と思わず納得してしまった。最近ではハバノリを採る人も少なくなっていると聞いたが、こういう文化は後世まで残って欲しいなぁと思う。

生海苔

生海苔の醤油煮。


生ワカメ

写真の上が、生ワカメ。下が湯がいた状態。


アオノリ

アオノリ。瓶詰めとは香りの良さが違う。


ハバノリ

ハバノリ。火で軽く焙るとすぐに、写真下のような緑色になる。焦げやすいし、焦げるとまずくなるので注意。


―――END


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