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究極のアラ料理


 「料理に究極なし」という、辻静雄氏の意見に賛成なので、本当に究極なのかどうかは知らないが、ここ大塚は、漫画「美味しんぼ」にも紹介されたアラ料理のお店である。

 九州に来たら、絶対にアラを食べてみたかった。しかし、これまで東京で食べたアラのお刺身は、めずらしいけれど特にどうということのない味であった。わざわざ「美味しんぼ」の紹介する相撲茶屋さんで食べなくても、つまりそんなミーハーなことしなくても良いかなぁと、内心、少し思っていた。

 が、結論から言うと、ここのアラシャブを食べずして、アラを語るなかれ! いや魚料理を語るなかれ!と言いたい。正直、刺身はフグの圧倒的勝利であり、ヒラメ、オコゼ、コチなど、他の白身魚にも劣ると思う。だから、最初に刺身が出されて食した時、「あぁ、やっぱりそうかぁ。高い勉強料になったなぁ」と思ってしまった。同行した者にも、「こんなトコに連れてきやがってぇ」という眼で見られてしまった。弁解すれば、アラの刺身がそこまで不味いワケではない。ただ、一人1万円強という値段(お会計は飲み物入れて約2万円だった)のコースのしょっぱなとしては、期待にものすごい応えたワケではなかったということだ。

 そんな落胆している中、アラの空揚が出てきた。鱗と皮つきである。鯛の鱗の空揚、ヒラメの鱗の空揚というのはあるが、身に、皮と鱗までついた空揚は初めてであった。う〜ん、なかなかイケル。良い気分になってきた。そして、ついにアラシャブの登場である。

 下記のような、直径、4,50cmはあろうかという大皿に、肉厚に切られたアラの身が盛られて登場。見た目も圧巻である。けれど、この大皿にたったの8切れというところがショモイ。しかし、一切れ千円もするのだから、そんなに頼めない。貧乏人は、思いっきり堪能することはできない世の中なのだから仕方ない。

 出汁が沸騰すると、仲居さんが、アラをシャブシャブにしてくれる。身が厚い分、火に通す時間も長めのようだ。だいたい、20秒くらいだろうか。一切れずつ鍋に投入し、調理が終わるとサーブされ、次の一切れが投入される。決して、二切れを一度に投入しないところが良い。

 シャブシャブにされたアラを食すと、それは私にとって新たに発見された天体であった。このような魚の味には出会ったことがない。魚の繊細さと、獣肉の荒々しさを併せ持った、凄みのある旨さだ。明鏡止水の境地というか、シンと張り詰めた、究極的に静的な旨さを持つフグとは対極にある味だ。

 アラは火を通すことで、はじめてその真価が発揮されると知った。東京で、刺身しか体験したことなくアラの価値を決めつけていた自分を恥じた。シャブシャブが終わると、アラ鍋に突入。骨にくっついた塊の肉が旨い。旨すぎる。またそうしたアラの旨さが溶け出たダシで湯がかれた野菜も旨い。さらに、アラの旨味が凝縮された最後のエキスで作った雑炊は空前絶後。博多っ子が、フグ鍋にも負けないと自負する理由がわかった。体感した。幸せな晩餐となった。

アラシャブ

アラシャブ。旨いのは嬉しいが、一切れ千円!野暮な話しだけど・・・。


大塚の店内

相撲茶屋というだけあって、店内は土俵を意識しているのか、床が砂であった。



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