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モッツァレラチーズは、日本の汲み上げ豆腐である。


 真のナポリピッツァと同時に、すごく興味があったのが水牛のフレッシュ・モッツァレラチーズである。日本で買うと、1000円以上もする高級食材。イタリアではどのように食べているのかを知りたかったのだ。

 私は現地で、2つの店で水牛のフレッシュ・モッツァレラチーズを注文した。1個約5ユーロであったから、安いピッツァ1枚の値段よりも高い。どうやら現地においても高級食材のようである。そして頼んでみて本当に良かった。いろいろ驚愕の出来事があったのである。

 まず驚いたのは、水牛のフレッシュ・モッツァレラチーズが、まんまるの形をしたまんま、出てきたのである。横に香草が添えられていたが、味付けはなんにもなし。超シンプルな形である。テーブルには塩とか胡椒とかもないし、オリーブオイルを渡されるわけでもない。だから、本当にそうなのかわからないけど(あるいはからかわれたのかもしれないが)、チーズという素材の味をそのまんまダイレクトに楽しむ、という食べ方なのである。これは、たぶん水牛のフレッシュ・モッツァレラチーズだけではないかと推測している。その理由は食べてみて初めてわかった。

 日本で輸入されているそれとはレベルが違う。何が一番違うかと言うと、チーズの水分量である。まぁるい形をしたチーズに、ナイフを入れると絞り切ってないチーズの乳しょう(ホウェー)が、とめどなく溢れてくるのだ。ナイフの切れが良くないので、どうしてもチーズを押し付けるようにして切るようになってしまう。そういう理由もあったけど、このツユの量はハンパではない。水牛のフレッシュ・モッツァレラチーズの、4割くらいはこの水分で出来ているといっても過言ではないだろう(数字の根拠はないです)。

 実際に食べてみても、ジュワ〜っと口の中でホウェーが溢れてくる。チーズはタンパク質の固まりであるから、繊維的な質感も感じるのだが、こんなにふんわりしているモッツァレラチーズは食べたことがない。何回か、イタリアから輸入したフレッシュタイプのモッツァレラチーズを購入したことがあるが、あれはパッケージの中で全部、水が出きってしまったモノだったのだ、と思った。

 2店目で食べた水牛のフレッシュ・モッツァレラチーズも、添えられた香草の種類は違ったが、基本的に味付けなしの同じスタイルでサーブされた。が、こちらの店のモッツァレラは、いくぶん水分が流れ出てしまっていて、チーズの繊維質が少し固く感じられた。それでもチーズのおツユがドバドバと溢れてくる。この瞬間、私は水牛のフレッシュ・モッツァレラチーズとは、日本における汲み上げ豆腐なのではないかと思った(あるいは寄せ豆腐とか)。なぜなら汲み上げ豆腐も、溢れる呉汁が美味しいからである。それに放っておくと、水分がどんどん流れ出てしまう。だから、どちらも作りたてであればあるほど、ツユ本来の旨さが味わえるのである。シンプルに食べるというスタイルも豆腐と同じだと言えるし。

 チーズと豆腐の関連性は、これまでにもいろいろ言われてきたけれど、豆腐にもいろんな作り方や種類、食べ方があるのと同様、チーズも同じような多様性を持っていたのである。そして、汲み上げ豆腐に相当するのが、水牛のフレッシュ・モッツァレラチーズだったのである。豆腐に旅させちゃいけない、という言葉があるのに、汲み上げ豆腐なら、なおその場で食べなければならないよなーと思った。ちなみに、日本で水牛のフレッシュ・モッツァレラチーズを頼むと、ほとんどの店がカットした一部分だけを出してくるが、上記の理由で、こういうモッツァレラはすべて美味しい部分が流れ出てしまっていることになる。あのモッツァレラの味はナポリでしか食えんだろう。

 それにしても、イタリアと日本。素材を味わうという嗜好のスタイルがここまで似ているとは思わなかった。私はますますイタリア料理が好きになったのだった。

モッツァレラチーズ

写真の奥が、水牛のフレッシュ・モッツァレラチーズ。もう半分以上食べた後。



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